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「引き算」でなく「足し算」の機能性清酒を発売した理由

商品/サービス

2020年2月に、日本盛は「健醸」を新発売しました。

「発酵のちから」でオルニチンを高生産した日本酒です。

実は25年前にも同名の商品を発売しています。

なぜ今一度同名で新しい商品を出したのか。またこの商品の想いは。

今回は、この想いを5つに分けてお話させていただきます


お酒の「愉しみ」に「思いやり」を足し算

 「引き算ではなく、足し算のお酒の開発を」―巷にあふれる機能性飲料の多くは「オフ」「カット」などの「引き算」のものばかりです。

しかし、糖質がカットされるとその分「味わい」が犠牲になり、物足りなさを感じられる「引き算」には限界があります。

そこで、味わいを犠牲にせず別機能を前面に打ち出した商品の開発を進め、「健醸」を発売しました。

日本酒本来の味わいを損なわずに、からだに良いと言われている「オルニチン」を摂取できる、いわば健康を「足し算」したお酒です。

特定の成分を減らすのではなく、また添加物を加えるのでもない「発酵のちから」により作り出すことで完成させた「新しい日本酒」とも言え、健康を意識した方にも愉しんでいただけるはずです。


オルニチン(アミノ酸)に特化した理由とは

 オルニチンは「しじみ」に多く含まれている成分です。認知浸透度を調査した結果、「肝臓に良さそう」というイメージを強く持たれていることがわかりました。要するに、すでに消費者の間で認知度も高く、ポジティブなイメージが広く浸透しています。

 そしてお酒は生活にとって、切り離すことができない嗜好品です。そんな日本酒を飲む方々の「どうせなら少しでも体に良いものを」というご要望に応えたい、という思いで商品化を目指しました。

 なお、当初は「1合あたり、しじみ20個分」だったのですが、最終的には1.5倍の30個分まで酵母の持てる力を限界まで引き出すことができました。お椀1杯分のしじみをイメージしています。

 「せっかく飲むなら、美味しくて少しでも体に良いものを」という消費者のわがままなニーズを捉えた設計だと自負しています(笑)


機能性清酒という市場~試行錯誤の積み重ね~

 日本盛は、1989年の創業100年を機に「健康」「自然」「新鮮」を3本柱にした商品開発を始めました。その中で、機能性を持たせた「健康」系清酒というジャンルにおいて試行錯誤の積み重ねがありました。

 「日本酒は糖質が高い」とのご意見を受けて研究を重ね、糖質50%オフ、70%オフ。そしてついには業界で初めて「糖質ゼロ プリン体ゼロ」という商品を開発するに至りました。

 一方で、糖質カット系以外の画期的な商品としては、ビタミンB群の一種であるイノシトールに注目。大量生産が可能な麹菌を育種(※)し、清酒の原料からイノシトールを多く含ませる方法を開発して作り上げたのが、初代の「健醸(1995年発売)」でした。通常の日本酒の50倍近くのイノシトールが含まれている商品です。しかし、残念ながら2015年に終売しました。

(※) 育種:自然界から新たに採用するのではなく、既にある微生物(酵母・麹菌等)を品種改良すること。


添加ではないオルニチン(研究開発)

 日本酒にはアミノ酸が多く含まれており、オルニチンはその一種。醸造工程中に生成するものなので、それを「発酵の工夫で増量できるのでは?」との仮説を立てて研究開発を始めました。

 何度も酵母の選抜作業を繰り返し、オルニチンを高生成できる酵母の育種だけで2年半も。それ以上に苦労したのは、そのあとの現場醸造技術の確立でした。オルニチンの量を大型の醸造タンク内でも安定して製造できる状態になるまで、何と通常の6倍近い133回もの小仕込み試験を行いました。

満を持しての「健醸」復活 ~命名に込めた想い~

 ネーミングについては、1995年に発売した初代「健醸」の名前をそのまま譲り受けました。中身は全く異なるものの、初代健醸も「足し算」の機能性清酒であり、そしてなにより25年前の発売当時、命名に当たって数多くの案が出された中から、選び出されたのがこの名前だったからです。

 改めて、健康をコンセプトとした商品として良いネーミングだと思いますし、これからも大切にしていきたいという熱い思いが社員一人一人の意識に脈々と息づいています。

最後に

 今回は新発売のタイミングが運悪く「コロナ禍」に重なったことで、各方面に商品の魅力を十分にお伝えすることができませんでした。

 昨今は、外出自粛が求められたことで「家飲み」も増えましたし、アプリを利用した「オンライン飲み会」など、新しいスタイルの楽しみ方が広がりました。これは今後の飲酒環境やコミュニケーションにとっては追い風になると捉えています。

 いずれにせよ、私たちは常に消費者の皆様に「人生を楽しみながら、お酒と長く付き合っていただきたい」という思いで商品を送り出しています。「せっかく飲むなら、美味しくて少しでも体に良いものを」の要望に応えた「健醸」がこの時代、この世相、このタイミングで世に出たことは何かの縁かもしれません。これからも皆様に愛され親しまれる銘柄として、末永く愉しんでいただけることを願っています。

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